「公務員の安定」はもう幻想か?15年勤めて分かった役所の閉塞感の正体

公務員を辞めた理由

「公務員なら安定してるね」。そう言われるたびに、なんとも言えない気持ちになっていました。

入職前の私は、東京の産業用機械メーカーで営業とマーケティングをしていました。いわゆるブラック環境で、心身ともに限界になって退職。その後、海外留学をはさんで公務員専門学校に半年通い、社会人枠で九州の市役所に入庁しました。

「安定」を選んだ理由は、ただひとつ。もう消耗したくなかったから。あの頃の私には、それが全てでした。

でもそれは、大きな勘違いでした。


あなたが感じている「モヤモヤ」の正体

辞めたいわけじゃない。でも、このままでいいとも思えない。そんな宙ぶらりんな感覚、ありませんか。

私がそれを感じ始めたのは、入職からそれほど経たない頃のことです。直属の班長に、入職初日にこう言われました。「これまでの経験は忘れてやれ」。まだ何も始まっていないのに、です。この一言で、なんとなく察しました。ここがどういう場所か。

あの感覚は、怒りでも失望でもなく、「なんか違う」という静かな違和感でした。そしてその違和感は、15年かけてじわじわと正体を現してきます。


閉塞感の原因① 前例踏襲という名の思考停止

観光課に在籍していたとき、窓口業務の一部をExcelのマクロで自動化できると気づきました。毎日同じ手作業をくり返している職員がいて、私には明らかに「改善できる」と見えていました。前職での経験があったので、仕組みも頭の中に描けていた。

上に提案したら、こう返ってきました。「それは情報政策課の仕事だから」「来年度の予算要求で検討しましょう」。

結局、何も変わりませんでした。翌年も、その翌年も、同じ手作業が続いていました。

これは私だけの話ではありません。役所という組織では、「前例がない」こと自体がリスクとみなされます。失敗のリスクを回避するために変化しない、という選択が合理的とされる世界です。そこで「改善したい」という気持ちを持ち続けることは、正直なところ、かなり消耗します。


閉塞感の原因② 年功序列という見えない天井

どれだけ成果を出しても、どれだけ努力しても、給料はほぼ変わりません。評価されるのは「長くいること」と「波風を立てないこと」。そういう構造になっています。

観光課では、土日出勤が当たり前でした。代休はあるはずなのに、消化できないまま消えていく。防災の待機当番があれば、休日も遠出できない。それだけ働いても、給料は年功序列の枠の中です。

「あと何年かすれば上がる」という言葉を信じて待ち続けるしかない構造。あなたの努力や能力は、その構造の中では評価の対象にならないのです。


閉塞感の原因③ 逃げ場のない人間関係

コロナ前の飲み会は、ひとことで言えば地獄でした。お猪口での返盃が続く席で、飲めない人間には人権がない。頭を叩いてくる先輩がいて、若手が幹事をやると参加は確定。私はお酒が苦手だったので、毎回本当に苦痛でした。

それだけなら、まだ「時代の空気」で片付けられたかもしれません。でも、女性職員への脚を触るような行為や、悪質な下ネタが「普通の雑談」として流通している職場環境を、私は何年も見続けました。誰もおかしいと言わない。それが当たり前だった。

民間であれば部署を変える・転職するという選択肢があります。でも役所は、人事異動があっても同じ組織の中です。逃げ場のない人間関係が、じわじわと精神を削っていきます。


閉塞感をどう打破するか

「辞めよう」と決意して人事課に相談しに行ったとき、こう言われました。「考え直してください」「ご家族はどうお考えですか」。引き留めるというより、責任を問うような言い方でした。

あの瞬間、組織が個人をどう見ているかが、はっきりわかりました。あなたの人生ではなく、組織の人員管理の問題として捉えている、ということです。

では、どうすればいいのか。私が15年かけてたどり着いた答えは、「出口を知っておくこと」です。今すぐ辞めなくていい。でも、転職市場でどんな仕事があるか、自分の経験がどう評価されるかを、在職中から少しずつ調べておく。選択肢があると知っているだけで、あの息苦しさはかなり変わります。


「最悪でも死なない」という事実

生活保護課に配属されたとき、私の価値観は大きく揺らぎました。

そこには、戦地で生まれ育った人がいました。突然、事故や病気で全てを失った人もいました。様々な事情で今を生きている人たちと向き合いながら、私はあることを確信しました。

人間は、何があっても生きていける。そして、人は思っているよりずっと、たくましい。

役所を辞めることが怖いとしたら、それは「最悪の場合どうなるか」が見えていないからだと思います。でも、最悪でも死なない。私はそれを、頭の知識としてではなく、現場で実感として学びました。

1度きりの人生で、閉塞感の中に居続ける必要は、本当にあるのでしょうか。


まとめ

「公務員の安定」は嘘ではありません。でもそれは、変化しない代わりに閉塞感を引き受けるという取引でもあります。

前例踏襲、年功序列、逃げ場のない人間関係。私が15年かけて感じてきたモヤモヤは、構造的な問題でした。あなたが感じている息苦しさも、あなたの弱さや甘えではありません。

まず一歩だけやってみるとしたら、転職市場で自分がどう評価されるかを確認することです。今すぐ動く必要はない。でも、知っておくことは今日からできます。

この記事は著者個人の体験をもとに書いています。転職・退職の結果を保証するものではありません。

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