「公務員にはスキルがない」は嘘。市役所15年で身につく市場価値のある能力

転職・キャリア戦略

「公務員にはスキルがない」。

そう言われたことがありますか?あるいは、自分自身でそう思っていませんか?

私も、辞める少し前まで本気でそう思っていました。市役所で15年。観光課・生活保護課など複数の部署を渡り歩いて、退職した元公務員です。

入職前は東京の産業用機械メーカーで営業とマーケティングをやっていました。民間の空気を知ったうえで市役所に入ったわけですが、それでも15年経つころには「自分には何もない」と感じていた。おかしな話です。

でもそれは、大きな勘違いでした。


なぜ公務員は自分のスキルに気づけないのか

市役所という場所は、成果が見えにくい。数字で語れる結果がない。「今月、○件の契約を取った」「売上を○%伸ばした」という話ができないまま年月だけが過ぎていく。

そうなると「自分は何をやってきたんだろう」という気持ちになる。転職サイトを開いても、職務経歴書の欄が埋まらない気がして、画面を閉じてしまう。あなたにも、心当たりがありませんか。

問題はスキルがないことではなく、自分のスキルに「民間の言葉」がついていないだけなのです。市役所で身につくものは確かにある。ただ、それに正しい名前をつけていない。翻訳するだけで、武器になります。


市場価値のある能力① 利害調整力

観光課にいたころ、地域の商工会・旅館組合・地元NPO・行政の各部署、それぞれが「自分たちの要望」を持ち込んでくる場面が何度もありました。全員の意見を聞けば矛盾が出る。でも誰かを切り捨てれば次の協力が得られない。そのぎりぎりのラインを探るのが仕事でした。

これを民間の言葉にすると「ステークホルダーマネジメント」です。利害が対立する複数の関係者を調整して、物事を前に進める力。コンサル・プロジェクトマネージャーなどの職種で、企業が喉から手が出るほど欲しがっている能力のひとつです。


市場価値のある能力② 文書作成・論理構成力

市役所の文書は「読んだ人が誤解しない」ことを最優先に書かれます。主観を排して、根拠を示して、結論を明確にする。この訓練を何年も積んでいます。

民間でも、提案書・報告書・稟議書は論理が通っていないと通りません。「読んでもらえる文章」が書ける人材は意外と少ない。あなたが「当たり前」と思っている文書作成の精度は、民間の平均より高い可能性があります。


市場価値のある能力③ 法令・コンプライアンスの知識

市役所の仕事には、常に根拠法令があります。「なんとなく」では動けない。稟議を上げるにも、住民に説明するにも、「法的にどうか」という視点が染みついています。

民間企業では今、コンプライアンス強化の流れの中で「法令を理解した上で判断できる人間」を各業界が求めています。法務部門でなくても、現場でリスクを判断できる人材は価値があります。


市場価値のある能力④ 正確性と責任感

公務員の仕事でミスをすると、議会で取り上げられることもある。だから「正確にやること」が体に入っている。チェックリストを作る、二重確認をする、記録を残す——これを面倒だと思わずにやれる人間は、製造業・医療・金融など精度を求める業界で即戦力です。


市場価値のある能力⑤ クレーム対応力——そして「趣味の力」

生活保護課にいたころの話をします。

窓口に来る方の中には、追い詰められている人がいます。感情が昂ぶっている。言葉が荒くなる。それでもこちらは一定のトーンで、相手の話を聞いて、できることとできないことを整理して伝えなければならない。

正直、つらかった。心無い言葉で感情を逆撫でされる日もありました。それでもその積み重ねで、感情をコントロールしながら対話を続ける力がついたと思っています。これはカスタマーサクセス・クレーム対応・営業の現場で、そのまま使えます。

もうひとつ——趣味の話もしておきます。私は公務員時代に写真を本格的に始めました。異業種交流会にも顔を出すようになった。それが退職後、フリーランスのカメラマンとして動ける土台になりました。あなたが「ただの趣味」だと思っているものが、次の仕事の入口になることがあります。


スキルの棚卸しステップ

「自分に何があるか分からない」という方に、まずやってほしいことがあります。

紙に「これまでの仕事で、自分が担ってきた役割」を書き出してください。部署名ではなく、役割です。「窓口対応をしていた」ではなく「住民の要求を整理して、対応策を説明する役割を担っていた」という形で。次に、その役割を「利害調整」「文書作成」「法令遵守」「クレーム対応」といった民間で使われる言葉に置き換えてみる。

この「翻訳」をするだけで、職務経歴書の見え方がまるで変わります。


まとめ:「翻訳」するだけで武器になる

「公務員にはスキルがない」は嘘です。正確には、スキルはある。ただ、それに名前がついていないだけです。

民間と公務員の両方を経験した立場から言えば、市役所で15年積み上げたものは、翻訳さえできれば確かな武器になります。利害調整・文書力・法令知識・正確性・クレーム対応、どれも市場で必要とされているものです。

あなたが「当たり前」だと思っていることの中に、民間企業が求めているものが眠っています。まず棚卸しをしてみてください。それが最初の一歩です。

この記事は著者個人の体験をもとに書いています。転職の成功を保証するものではありません。転職活動の判断はご自身の状況に合わせてご検討ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました